鳥取大学 農学部附属 動物医療センター

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  • 診療開始/午前9時30分〜

知っておきたい危険信号

糞便の量、硬さ、色がおかしい(糞便の異常)

  糞便の状態は、犬や猫の健康状態を評価するパラメータの一つと言えます。糞便の状態を観察するときの項目として、量、頻度、性状(硬さや色)などがあり、これらが健康時と異なる場合には異常とみなされます。中でも、糞便が通常よりも軟らかい場合や糞便の色が異常を示す場合は、よく見られる異常所見です。

 軟らかい糞便は、通常よりも少し軟らかい程度であれば「軟便」、液状に近い状態であれば「下痢」と呼びます。これらの兆候は、腸管のぜん動運動が異常に活発になっているとき、または腸管内の水分量の調節に障害があるときに認められます。このような現象が認められる要因として、消化管(小腸又は大腸)、肝臓、胆嚢・胆管、膵臓に何らかの異常があることが挙げられます。ここでいう異常には、炎症、腫瘍、感染症(寄生虫、ウイルス、細菌)などが含まれます。さらに、消化器系臓器以外に要因があることもあり、代表的なものとして、食物アレルギーといった体質的なものやホルモンの分泌異常などが挙げられます。いずれの要因においても軟便や下痢を示すときには、糞便の頻度又は量は増加することが一般的です。

 便の色の異常は、特に、黒色や赤色といった色調が混在している場合が要注意であり、いずれも「血便」と呼ばれます。これは腸管内において出血が生じていることを意味しており、黒色便であれば上部消化管(胃や小腸)からの出血、赤色便であれば下部消化管(大腸)からの出血が疑われます。このような兆候が認められれば、当然ながら、消化管に何らかの異常があることが考えられ、これらの多くは軟便や下痢の原因と同じです。従って、軟便・下痢と出血便は、同時に発症することが比較的多いと言えます。

 糞便の状態を確認することはご家庭で日常的に実施できる健康診断です。ぜひ積極的にご確認いただき、何か異変を感じることがありましたらご相談ください。また、糞便の異常の原因の鑑別のためには、多くの場合糞便自体の検査が必要になりますので、異常を認めた糞便をご持参いただくなどのご協力をお願いいたします。