鳥取大学 農学部附属 動物医療センター

  • 文字サイズ
  • ふつう
  • 大きい

0857-31-5441

  • 受付時間/午前9時〜11時、午後1時〜3時
  • 診療開始/午前9時30分〜

知っておきたい危険信号

起立できない、起立してもすぐに座る(起立不能・起立困難)

 犬や猫が起立できなかったり、起立してもすぐに座り込んだりしてしまう状態は、それぞれ「起立不能」または「起立困難」と呼ばれます。犬や猫の場合、これらの症状は、神経疾患、筋肉疾患、循環器疾患などが原因となることが多く、通常、後肢のみ、または前肢と後肢の両方の機能障害を伴います。

 神経疾患の場合、脊髄の損傷や障害が原因の大半を占め、脊髄を取り囲む脊椎の骨折・脱臼または椎間板ヘルニアが多く、最近では、脊髄が進行性に変性する「脊髄軟化症」も主要な原因として挙げられます。さらに、これらの脊髄障害では、起立不能・起立困難に加えて、排尿困難や排便困難を伴うことがあります。

 筋肉疾患の場合、原因の一つに挙げられるのが重症筋無力症です。本疾患は、筋肉への神経伝達障害を生じる疾病であり、結果的に四肢の筋力低下などを引き起こします。

 循環器疾患の場合、代表的なものが猫の心疾患に伴ってみられる血流障害(血栓塞栓症)であり、両後肢の血行が遮断されることにより、後肢の麻痺を生じます。

 さらに、跛行の項で述べたいずれの要因も重度になれば、起立不能・起立困難を引き起こす可能性がありますので注意が必要です。

 起立不能・起立困難といった症状も、跛行と同様に、治療までに時間を要すれば要するほど、完全治癒に至らないリスクが高まってきますので、速やかな受診をお願いします。