肝門脈体循環シャント
肝門脈体循環シャントは、腸管から吸収した栄養物を肝臓へ運ぶ血管(門脈といいます)に異常があり、肝臓を経由しないで静脈へ接続する異常血管(短絡血管といいます)を形成することにより、肝臓での蛋白合成の低下、アンモニアなどの有害物質の代謝障害を起こします。血液中のアンモニア濃度が上昇すると、脳の神経細胞に悪影響を及ぼすため、意識混濁や痙攣発作を起こすことがあります。多くの場合は、生まれつき短絡血管が存在する先天性の奇形ですが、生後に新たな短絡血管がつくられるケースもあります。この病気では十分な栄養が全身にいきわたらないため、体格は小さく、食も細いのが特徴で、痙攣発作などの神経症状が現れて初めて飼い主が気付くケースが多くみられます。また、血液中のタンパク質濃度が低下すると、腹水が貯留することもあります。
血管造影によって短絡血管を確認することで確定診断され、外科的に短絡血管を狭める治療により、門脈から肝臓への本来の血液の流れを回復できれば症状は急激に改善します。これが困難なケースでは、消化管でのアンモニアの産生を抑えるために、タンパク質含量の少ないフードを与えたり、投薬によって排便を促進することでアンモニアの吸収を抑制するなどの対症療法がある程度有効なケースもあります。