猫伝染性腹膜炎
猫伝染性腹膜炎は、コロナウイルス(猫伝染性腹膜炎ウイルス)の感染によって起こる全身性の疾患であり、特に1歳齢未満の若齢の猫に多くみられますが、成熟してからも発症することもあります。また、猫を多頭飼育している環境では発生頻度が高い傾向にあります。ウイルスに感染した際の症状は多様ですが、繰り返す発熱、元気・食欲の低下、目やに、咳や鼻水などの呼吸器症状、下痢などの消化器症状を呈することが多く、症状のみでは他の感染症との区別は困難です。病気の進行にともなって、全身の臓器に腫瘤(肉芽腫といいます)を形成し、特に、回腸・盲腸・結腸の他、腎臓や肝臓に腫瘤が形成されるケースが多くみられます。脳の血管周囲に炎症が起こると、痙攣発作や起立不能などの運動失調をはじめとする種々の神経症状がみられます。感染したときの猫の免疫反応の違いによって、神経症状を呈するケース、腹水が貯留するケースなどに分かれますが、神経症状を呈した後に腹水貯留へ移行するケースもみられます。
診断にはウイルスに対する抗体検査やウイルス遺伝子の検出などが必要です。根本的な治療法は確立されておらず、ほとんどのケースでは発症から数ヶ月~1年半程度の間に死亡します。病気の進行には過剰な免疫反応が関与するため、治療は免疫抑制剤などによる対症療法が主体となります。早期診断によって、1年以上の延命が得られるケースもあるため、異常を感じたら速やかに受診されることをお奨めします。