鳥取大学 農学部附属 動物医療センター

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先端医療による治療例

ICG修飾リポソームを用いた光線温熱化学療法

 腫瘍組織に選択的に薬物を蓄積させる方法の一つにEPR効果(Enhanced Permeability and Retention Effect)があります。この理論は、次の通りです。腫瘍血管の血管内皮細胞は正常組織の血管内皮細胞に比べて、その整列が不均一であることが知られています。そのため、正常血管内皮細胞間隙からは漏出しない粒子(20-200nm)でも血管外に漏出します。その結果、腫瘍組織内に粒子が蓄積していきます。現在、細胞膜と同じ材料で作られた小さな気泡(小胞)、すなわち“リポソーム”をこのような粒径にして、血管内に投与し病変部に運ぶ研究が進められています。

 2010年、千葉大の田村先生らは、このリポソームの膜にインドシアニングリーン(ICG)を結合させることに成功しました。本剤が腫瘍に蓄積した段階で、光照射することにより、ICGの特性である温熱療法、光線力学療法を実施できます。さらにリポソーム内に、抗がん剤等の種々の物質を内包させることにより、より効果的ながん治療が期待できます。

 

症例:猫、雑、雄、15歳、4kg

 数日前より左目の突出と鼻出血のため来院。細胞診により、独立円形細胞が多数みられたため、リンパ腫を強く疑いました。CT検査では、鼻腔内マスと眼窩への浸潤が確認されました(図1)。

 家族は積極的な治療は望まないとのことだったため、話し合いの結果、ICG修飾リポソームによる治療を行うこととしました。補助療法として、丸山ワクチン(週3回)、高濃度ビタミンC療法(週2回)を併用しました。治療開始1週間目より鼻出血は消失し、第35病日には眼球の突出も消失しました。CT検査においても鼻腔内、眼窩のマスはほとんど消失しました(図2)。現在治療後約1年が経過ますが、再発はみられていません。

 

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図1.初診時CT像

 

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図2.処置後35日目